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11th Japan Project Meeting

開催場所:
丸ビルコンファレンススクエア
丸の内ビルディング
東京都千代田区丸の内2-4-1

共催 / 後援:
NBER(National Bureau of Economic Research),
Center on Japanese Economy and Business(日本経済経営研究所),
EIJS(European Institute of Japanese Studies),
Australia-Japan Research Centre(豪日研究センター)

開催内容:
Japan Project Meeting は、日本経済に関するアカデミックなコンファレンスでは、おそらく世界で最も権威があるコンファレンスである。毎年東京で開催され、多数の内外の有力エコノミストが参加する。CARFは一昨年からこのコンファレンスの共催者として積極的に運営に関与している。

今年2008年のJapan Project Meetingは、6月24、25日に丸ビルコンファレンススクエアで開催された。8つの論文が発表され、内外の大学・政府機関・シンクタンクから70名以上の参加者があった。恒例のランチタイムスピーチは、今年は内閣府特命担当大臣(経済財政政策担当)の大田弘子氏が行った。

例年のことだが、発表された論文は、現在の日本経済が直面する問題を扱うものばかりであった。以前と異なり、金融危機が去ったとの認識を反映し、金融政策や銀行部門に関する論文は2本のみになった。逆に、今年は、日中経済関係に関する論文が2本あった。論文の著者と題名は、下記のプログラムを参照されたい。発表順に要約すると、次のようになる。

*Chen-Choi-Sawada論文は、生命保険と自殺の関連についての実証分析である。生命保険をかけてから、ある期間を経ないと、被保険者が自殺をした場合、保険金は出ない。日本では、その期間が経過した直後に自殺する例が多いが、諸外国でもそのような傾向が観察される。

*Lopez-Spiegel論文は、90年代の金融ビッグバンにより解禁された、発行体が外国法人の円建て債(サムライボンド)についての実証研究である。国内証券会社が引き受け手の場合の方が手数料は高いが、債券の格付けなどの特性をコントロールすると、海外証券会社の方が高い手数料を課している事実が明らかになった。

*90年代後半以降、日本の銀行の合併が相次ぎ、いくつかのメガバンクが誕生した。Harada-Ito論文は、これらの合併により、銀行の倒産確率が低下したかを検討している。倒産確率としては、ファイナンスのオプション価格理論を用いて銀行の株価から計算できる「倒産への距離」を用いる。彼らの論文によると、合併後に倒産確率は低下しなかった。合併によって人員削減・支店の統廃合などのリストラが進行するという希望的観測は実現しなかったことが窺える。

*日本の法人税制では、グループに属するそれぞれの企業ごとに法人税が課される。法人税は、資本金1億円以下だと税率が低いので、節税のためにグループ内で法人所得を分配するインセンティブが発生する。Onji-Vera論文では、グループの個々の企業のデータを用いて、そのような節税行動が観察されることを報告している。日本でも連結税制を導入すべきだとこの論文は主張している。

*Armstrong論文は、日中関係において政治と経済がどのように関連しているかを、統計データを用いて分析している。日本の中国に対する政治的変数としては、日本において報じられた中国についての好意的な記事の本数から非好意的記事の本数を引いたもの、経済変数としては、中国から日本への純輸入額を用いる。このようにして作成された1990年から2004年の月次データによると、日中間の政治的な緊密度が高まれば、経済の緊密度も増すことがわかった。

*田中論文は、『週刊住宅情報』から得られる1990年代の東京のマンション価格データを用いて、大手不動産会社が寡占的にマンション価格を決定していたかを検証している。この論文によると、寡占による価格支配力は概して低いが、土地をはじめとする材料価格が上昇すると予想される時には寡占度は上昇する。

*90年代の日本のデフレの原因は、中国からの安い輸入品だという説がある。Broda-Weinstein論文は、この説の検討をしている。日本に輸入される財・サービスの詳細なデータを用いると、①中国からの輸入品の価格は円建てでほとんど低下していないこと、②中国から輸入される製品の範囲は急速に拡大しており、それがより割高な他の国からの輸入品の代替となっていること、などがわかった。

*最後の論文(Katoその他による)は、QCサークルで代表される、職場レベルで形成されるHPWS(High Performance Work System)と呼ばれる労働制度について、日本と韓国の比較研究を行っている。データは、現場の労働者から直接聞き取りという形で収集された。きわめて多数の事実が明らかになった。たとえば、QCサークルは日本では参加する労働者は減少しているが、韓国ではそのような傾向は認められない。

なお、恒例のパネル討論の今年のトピックは、日本の構造改革の遅れだった。経済諮問会議の八代尚宏氏、政策研究大学院大学学長の八田達夫氏、Macquarie Capital SecuritiesのRichard Jerram氏によるプレゼントパネル討論があった。
ファイル(PDF):Program