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第10回

今回の素材はto solve the outcome of the coordination problem among short term creditorsにglobal game methodsを用いたPrinceton大学のStephen Morris and Hyun Song Shinによる“Illiquidity Component of Credit Risk”である。
 Shin教授は第6回、第7回の会合で取り上げたGeneva report作成の中心メンバーの1人である。liquidityに焦点を合わせた金融現象・規制に関わる両教授の一連の理論的論文は、金融(規制)論議の有力かつ新たな潮流として近年注目を集めてきた。本フォーラムにおけるGeneva reportの検討に際して提出された、「最近の『危機』を念頭に置いた政策論議、とりわけ結論導出を急ぎすぎるきらいがある。これとは別にShin達の研究を本格的に取り上げよう」との声に基づくものである。とりわけ理論面に注目して、最新(May 2009)のdiscussion paper (discussion用draft)を選択し著者のHPからダウンロードした。
 川口康平・成田悠輔両大学院生に紹介とコメントを依頼した。いつものことながら、議論は沸騰した。6時半頃から議論がスタートしたが、9時になってようやく半ばに到達する状況であった。いったん集約して残りを急遽設定する次回の会合に廻すかこのまま継続して強行着陸を目指すかと議論したうえで、もう1回開くほどのことはないとして、10時過ぎにようやく終了した。
 Bear Stearns or Lehman Brothersの破綻に象徴される昨今の“credit risk”(credit crunch or credit crisis)論議を念頭に置いて, “total credit risk”およびこれを分けた“asset insolvency risk”と“illiquidity risk”の3つの“credit risk”に区分して考察し, ここにglobal game methodsを適用した論文である。しかもこの線に沿った研究を主導してきた研究者が基礎理論を提示したものであるから、注目を集めて当然である。本フォーラム参加メンバーも周到な準備に基づく報告を楽しみ、長時間にわたる議論に熱中した。
 「未完成・建設途上の構築物であり、今後、無事に完成したとしても、ここから直ちに銀行を含む金融機関規制に関する重大な示唆が直接的に得られるようなものではない」というのが参加メンバーの共通認識であり、政策的含意や具体的な政策(手段)との関連は棚上げして、理論モデルを提示する論文として検討した。
 いくつかの点で「ここはどうなっているんだ」「ここはこのままではマズイ、無理だ、ダメだ・・・」などという問題提起が参加者の多数の支持を集めたことなどから検討は難航した。後半は、「なにはともあれ最後まで行こう・・・」と先を急いだ。
 3時間半から4時間に及んだ検討から各参加メンバーが得たものは多い。論文の欠陥などの指摘のみにこれだけの時間を費やしたわけではないことはもちろんである。以下は、状況を象徴する参加者の発言である。(三輪による多少の脚色がある。)
 「global game methodsを使うと聞いた段階で即座に予想される結論の範囲内にほぼ留まっており、その意味ではあまり面白い論文ではない。Leverage、自己資本比率などを注視するliability面の対応策に偏重する傾向が強かった従来の政策・研究と異なり、現金保有比率などのasset面(の構成)についても明示的に注意を促すが、この面からもあまり面白い結果が出て来ない。」
 「単体の金融機関に焦点を合わせた従来の規制のあり方に対する批判が強い最近の状況下で、systemicな視点が考察の対象になっているかと期待したが、この論文では明示的にはそうなっていない。たとえば大きな話題になった彼らのBrookings papers掲載論文の結論がここから導かれるということもないし・・・。」
 「いろいろと厳しいですね。とはいえ、簡単なことでもきちんと言うことはたいへんなことなのですから・・・」

 川口康平・成田悠輔両氏による当日の報告用メモは次からダウンロードできる。

  1. 報告用メモ
  2. presentation用スライドfile