Event

過去のイベント

第11回

今次の「金融危機」の過程で「リスク管理」という表現が頻繁に話題になっている。「またか・・・」と苦笑する人達や、「当分騒々しくなり、仕事も増える。わけのわからない無理な注文も多いし。やれやれ・・・」とゲンナリする人達、さらに「『リスク管理』体制を強化してきたのに、こんな大損を蒙るなんて、詐欺にあった気分だ・・・」と息巻く上司に、「すみません」と言いながらこれも「給料のうちだ」と自分に言い聞かせる人達も少なくないだろう。
  「100年に一度・・・」という表現から、分布のtail、それも極端な値(極値、extreme value)の振る舞いに関心を抱き、関連する統計・確率論およびその利用の実態、そんな極値に関する統計データの存在および利用可能性、理想的なデータが得られない場合の実務上の取扱はどうなっているかという、健全ではあるがいささかトンデモナイ検討課題を提起して、今後の検討の取っ掛かりを求め、討議するための会合であった。
  たとえば、話題の各種Derivativesの格付けとの関連で「なぜかくも多くのAAA格の証券がdefaultになるのか・・・」との疑問・非難に関連して、「どうやってそんなものの格付けを実施しているのか」と考え、「そんな格付けを、金融機関・機関投資家はどのような姿勢・体制で利用していたのか?まさか、AAA格ならdefault riskはゼロだと考えたのではないだろう・・・」と素直に考え、お2人に報告あるいは話題の提供をお願いした。
  Extreme valuesの取扱の実務の現状については、「こうやっています・・・」というタイプの簡潔な紹介が可能な状況にはないことを前提に、キャピタスコンサルティング株式会社の森本祐司代表取締役に「大きな下方リスクの管理:理論と実戦の現状」と題してご報告をいただき活発に議論した。提示資料(ダウンロード可能)の3枚目のsheetに示される如く、話題は広範囲に及んだ。「『リスク管理』とは何か、どのように理解されているか?」という冒頭の質問から始まり、「今回新たに浮上した論点は何か?」、さらに、「問題の所在とその内容がかなり以前から広く認識されているにもかかわらず、対応がなかなか進展しない理由は何か?」と議論が進んだ。最後の点に関しては、「規制者の立場ではなく、投資家の視点から見ると、積極的に進める誘因(incentive)に乏しいのではないか?」との意見に賛同する参加者も少なくなかった。
  後半は、野村ホールディングス、グローブ・リスク・マネージメント部の柏原俊介氏から「リスクマネジメントの実務」と題するご報告をいただいて活発に討議した。「リスク管理」と表現する活動が、ビジネスの現場ではどのような組織・システムを通じて実現しているかという関心から、野村證券の実例についてご紹介いただいた。国際化・証券化が急速に進展する過程で、Lehman Brothersの事業の一部継承という「ショック」にも遭遇したNomuraのリスクマネジメントの実務の現状に関するご報告は興味深いものであった。中心は、12ページ以下のRisk Control Process Framework: ・Limit Control, ・Credit Approval, ・New Product Approval, Model Risk Controlである。
  例によって、にぎやかな議論が展開された。しかし、VaRの実務上の取扱の実情に関する若干の意見交換を除けば、極値の取扱に関する議論はさほど盛り上がらなかった。「問題」の性格・難しさ、取り扱い・対応の現状に関する参加メンバーの理解の深化には大きく貢献したはずである。とはいえ、「何を求められているのかさえ定かではない」難題に挑戦し大変な思いをされたお2人の報告者には大いに感謝します。

 当日の提出資料は次からダウンロードできる。

  1. 森本祐司氏「大きな下方リスクの管理:理論と実践の現状」
  2. 柏原俊介氏「リスクマネジメントの実務」