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第16回

今回は、「『貸し渋り』・『借り渋り』、と返済猶予?――ドタバタを娯しむための経済学のイロハ」と題し、フォーラムの進行係である三輪が話題を提供して討議した。最近の一連の「騒動」・ドタバタに至るプロセスを念頭に置いて、その娯しみ方の1つを話題とするものである。もともとは、来年の受験生を想定した東京大学オープンキャンパス経済学部プログラムの一環である講義(August 6, 2009)のために用意したもの(常識・定説の危うさ――銀行の不良債権・貸し渋りと「日本の失われた10年」?――)に基づく。これを餡子とするどら焼きを想定した皮の部分が今回の報告であり、その基礎編にあたる前半と、帰結に関する後半で構成される。いずれのPowerPoint fileも下からダウンロード可能。
  基礎編の入り口から入ってしまえば前半は簡単明瞭であり、一部の参加者から「高校生向けの話の基礎編ですか・・・」との不満が表明された。とはいえ、「一見複雑な一連の現象が、基本に忠実に解剖・分析すれば、こんな簡単なことか・・・」と娯しんだ参加者が多かった。しかし、経済主体間のvoluntary exchange by agreementの帰結として経済現象を理解する経済学の「基本のきほん」がしっくりこない一部の参加者は入り口で困惑し、ここから導かれる基本的な結論に当惑した(ようであった)。「貸し渋り」論議の現状や三輪の永年の経験に照らせば、もちろん、想定内の事態である。
 「あるとすれば『貸し渋り』ではなく『借り渋り』だ。そうだとすれば、『返済猶予』政策(騒動)の帰結はどうなるのか?」「努力義務を課され、結果の報告を求められる銀行はどのように行動するか?」「『希望がありませんでした』ではすまないだろう。どういうお土産を用意するのか?」などの話題は、残念ながらさほど盛り上がらなかった。
 「なぜ『中小企業』向け融資・『貸し渋り』が話題になるのか」という設問への回答として、昔ながらの資本市場の「二重構造」論を紹介し、それが1960年代でも根拠のない神話であったこと、1997年~1999年のcredit crunchといわれた時期でも顕著には観察されなかったことを紹介した部分についても、「なるほど」という反応はあっても、「そんな・・・」という反応はなかった。それほど根が深く歴史のある背景に基づくドタバタか・・・と素直に驚いたというところか。
 「単なる要請にとどまらず、政府による信用保証・損失補填が導入されると、何が起こるか?」「誰が得をするか?銀行は本当に困るか?」「中小企業は喜ぶか?喜ぶのはどのような中小企業か?」「その他には?」などと話題は膨らみ、おなじみのmoral hazardが話題として登場する。「Moral hazardの実質的内容は?」「有効な防止策・抑制策・対応策は?」「それを放置することの中長期的影響は・・・?」と話題が進めば、さらに気が重くなる。さらに、「日本特有か?」「今回のドタバタは特殊か?」と進む。10年前の小渕内閣で大幅に拡充して実施された政策の実質的延長線上に位置する今回の「政策」「騒動」に対するマスコミの反応もドタバタの一環か?
 「これは論文にしないのですか?」との問いへの回答は、「その計画はありません」である。時間的余裕とともに発表機会がないことが一応の理由である。このPowerPoint fileで理解しない(できない)読者のうち、論文にすれば理解する読者は極めて少ないだろうとの現実的判断も理由の一部である。

 当日の提出資料は次からダウンロードできる。