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第27回

今回は、Gary Gorton “Slapped in the Face by the Invisible Hand: Banking and the Panic of 2007”について新井富雄氏から報告と話題提供をお願いし、その話題の中心に位置するrepo市場に対応する日本の国債レポ市場に関連して日本銀行の村國聡氏から「国債市場と流動性――国債市場における市場慣行・インフラ強化の展望について」と題して報告を受けて、討議した。
 「Shadow Banking SystemはReal Banking Systemであり、現在起こっていることは、a banking panicに他ならない。このことを理解することは、金融システムの将来について考える際に極めて重要なこと」だとする見方・主張を中心とするGortonの論文は、FRB of Atlanta’s 2009 Financial Markets Conference: Financial Innovation and Crisisで報告されたものである。昨今盛行する、銀行を中心とする伝統的金融機関に焦点を合わせた「金融パニック・混乱の原因と再発防止策」論議に、別の新たな視点を提示し、冷静に検討を進めることの重要性を訴える役割を果たしうる。
 19世紀半ば以降のアメリカで頻発したbanking panicが大恐慌後の預金保険制度の創設によりほとんど影をひそめた。今回のpanicは、ほぼ70年間にわたって継続した平穏な状況の後に到来した。預金保険制度によって保護されるのは小口の預金であって、大口の「預金者」にはその他の安全対策が必要であった。そのような大口「預金者」の比重が高まり、同時に、情報処理・通信両面で現実化した顕著な技術進歩が伝統的「金融機関」の相対的魅力・優位性を低下させた。このため、一部で好んでshadow banking systemと呼ばれる”real banking system”が急速に発展した。(Gortonの主張ではないが、発展が急激であったことと、「日陰の存在」であるかのような位置づけのため、生じるおそれのある混乱への対応策が遅れたということか?)そうであれば、日本でも同様の事態の顕在化を予想するのが自然だろう。
 今回の事態・混乱の診断としては参加者の評価は高かったが、最後の対応策の部分に関して積極的支持者は見あたらなかった。事柄の性質上当然のことであり、今後の冷静な議論・対応が必要だろう。今回取り上げたのもその趣旨であったから、予定通りである。
 今回の金融パニックの過程で生じた如き大混乱は、少なくとも比較可能な規模では日本では生じなかった。「Lehman shock時の日本の状況はどのようなものだったか?」「日本で大きな混乱が生じなかったとすれば、その原因は何か?」「近い将来に関してはどうか?」「日本の国債レポ市場の実態はどのようなものであり、どのような変化しつつあるか?」などという関心から、日本の国債レポ市場に関してお話をうかがい、討議した。 
 盛りたくさんの内容であったこともあり、とりわけ後者の内容に関しては、実態と検討課題について教えていただいたという観が強い。とはいえ、今後のフォーラムの活動の基盤形成に大きく貢献するはずである。いつもながら、多様な角度からの議論が錯綜する会合に我慢強くおついあいいただいた新井・村國両氏に深謝します。

 当日用意された資料のうち、新井さんと村國さんのものは下記からダウンロードできる。さらに、村國さんが参照された証券決済制度改革推進センターの会議資料は下記URLからダウンロードできる。