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第35回

今回は、「銀行ばなれと金融危機騒動の実相:『法人企業統計季報』個表を用いた検討結果の概要」と題して三輪が報告し、議論した。
 新春から開始した「法人企業統計季報」の個表を用いた検討作業で、はなはだしい「銀行ばなれ」がとりわけ中小規模企業で急激に進行しつつあること気づいた三輪は、とりあえずの「発見」の報告と今後の検討課題に対する意見蒐集を企図して第26回(2010年4月30日)の会合で報告した。
 その後、検討課題・方法を再構築して作業を進め、予定通り9月末に報告書を作成して公表した。本論4本のdiscussion papersとIntroduction and Summaryの5本で構成され、合計A4で400ページ、図表が800程度の膨大なものである(CIRJE-J-222~226)。
 この概要と読み方を整理して報告し、今後の検討課題・方向を探ることを目的とする会合であった。多くの図表を見せながら進める「紙芝居」のような発表であった。ダウンロードできるようにしたPowerPoint filesの前半が、報告のタイトルに即した簡明な結論である。後半のものが、今後の検討課題に即したものであり、報告者の中心的関心事に即したものである。当然のことながら、前半の簡明な結論が、参加者の関心を呼んだ。とはいえ、4月に「予告」された内容の確認であり、提示された図表に関しては、その極端さに驚き呆れ返ることはあっても、ほとんど議論はなかった。
 関心のある方はIntroduction and SummaryのDPをご覧いただきたい。1960年代まで遡っても企業の資金調達総額に占める「金融機関借入金」の比重(「金融機関依存度」)は通常考えられているほど高くはなかったが、バブル崩壊後、とりわけ21世紀に入る頃からその比重がさらに急激に低下した。三輪はこれを「銀行ばなれ」と呼んでいる。「季報」の調査対象の最小規模クラスは資本金規模1,000万円~2,000万円である。このクラスで、短期借入金残高が正(つまり、0ではない)企業の比率は1990年代末で半数になり、近年では1/3になっている。残高が正の企業の残高も急激に減少している。このような「銀行ばなれ」は規模の小さな企業ほどはなはだしく、1980年代の「自由化」で資本市場の活用が活発化したとされる優良大企業の「銀行ばなれ」はさほどではない。
 企業の金融機関依存度が通常考えられている水準を大きく下回れば、「金融機関の危機」=「金融市場の危機」という「常識」「通念」は崩壊する。このことを念頭において1997年~1999年のCredit Crunchや近年の「金融危機」を見ると、予想通り、いずれの規模の企業クラスについても、Credit Crunchなどと呼ぶに値するショックは企業の資金調達行動に観察されない。つまり、「金融機関の危機」ではあったとしても「金融危機」ではなく、その対策に投じられた膨大な資金・資源は投入に値する国民経済的価値はなく、政策として失敗だった・・・のではないか、ということになる。誤解に基づく「金融危機騒動」は実質的に高くついたことになる。
 以上が前半の内容の骨子である。その基本は、金融・資本市場の中心は「銀行」を中心とする金融機関であって、銀行を中心に金融・資本市場が回っている・・・という「天動説」は誤りであり、銀行も市場の参加者の一部にすぎないとする「地動説」へ基本的な見方の転換が決定的に重要であるという点である。対応して、これまで無視されてきた事柄に関わる検討課題が浮上する。この検討が後半の内容である。その内容に関心のある方は、ファイルの後半、さらにDPの225, 226をごらんいただきたい。
 参加者は、「今日の報告者はよくしゃべるなあ・・・いまさら驚かないけど・・・・」と呆れ返ったかもしれない。予定時間が経過して会議は終了した。

 報告用ファイルおよびIntroduction and SummaryのDiscussion paperは以下からダウンロードできる。