Event

過去のイベント

第36回

今回は、服部正純氏(日本銀行)と大橋和彦氏(一橋大学)から共著論文の”Does Retention Regulation Always Work? Incentives of loan screening in securitization under asymmetric information”について報告を受けて討議した。
 近年の金融危機(現在も進行中?)は多様な顔を持つ。しかし、大方の話題の焦点はサブプライム・ローンであり、これを組み込んだ証券化商品の発行・流通とこれに関わる「混乱」であった。「プロの投資家であるはずの巨大金融機関・年金がなぜこんなものに投資したのか?」とともに、「こんなものを発行し流通させたissuersは誰か?どんな連中か?なぜそんなことをしたのか?投資家をだますつもりだったのか?」、さらに、「こんなことの再発防止に向けていかなる対応策・規制を採用すべきか?」などの点に関して方々で議論が盛り上がった。具体的内容は、議論の場所、参加者、期待される役割などによって大きく異なっただろう。新聞・雑誌等に登場したのはごく一部にすぎない。
 「そのような証券化商品の発行・流通を禁止しろ」とする意見を受け入れず、「発生した事態を的確に予測しなかった格付け機関が悪い。格付け機関に対する規制を強化しろ・・・」という意見を「そんなものは気休めにもならない」などとして退けるとすれば、たとえば、「発行主体に発行額の一定比率の保持を義務づけ、おかしなものを売れば自分も傷つくようにしろ」というおなじみの意見が残る。この意見が人気を集め、万能の特効薬として広く受け入れられているように見える。この意見の妥当性について正面から吟味・検討したのがこの論文である。
 「こんなものに投資して損失を蒙った、資金運用責任者が悪い。責任を問われると『格付け機関が悪い・・・』と言い張る(言い逃れする)人達に資金運用を任せた意思決定者の責任はどうするのか?そういう人達の責任を不問に付して放置するような株主、年金受給者、国民・消費者もどうかしている・・・。民度の低さの帰結かもしれない」などとする見方の当否はここでは棚上げにする。
 少なからぬ参加者(さらに議事録の読者)は、メイン・タイトルを見て、論点を理解した段階で、検討の大雑把な方向を予想し、「結果はいかなる要因にどのように依存するだろうか?」という点に関心を抱くだろう。議論は予想通りに展開し、万能の特効薬ではないことはもちろん、いくつかの要因に依存する各種状況により結果が大きく異なること、しばしば主張者・支持者が想定するものとは異なる結果に至ることなどが示される。
「少なくとも少しは経済学を学んだ読者を想定するのであれば、当然”NO!”という回答が予想されるメイン・タイトルは不適切であり、『どのような条件下で有効か?』ぐらいにすべきだ。そうしないと、editors, reviewersが『バカにするな!』と考えて読む気にならず、publishしにくくなるでしょう」との意見も出た。”Retention regulation”に関わるissuesを俎上に乗せるための標準的な分析手法を提示して展開するものであり、議論は大いに盛り上がり、issuesに関する参加者の理解も深まった。参加者は議論を大いに楽しみながら、内容の改善にも少なからぬ貢献をすることができた。このフォーラムの趣旨・目的に合致する、有意義な会合であった。

 報告用ファイルは以下からダウンロードできる。