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第40回

今回は野村資本市場研究所の淵田康之氏から「金融規制と金融機関経営(概観)」と題して報告を受けて討議した。
 Lehman Shockから2年半、Geithner Planから2年が経過した。一時期はアメリカ政府をはじめとする各国政府の対応策が話題にならない日はないという状況下で、関連政策の内容や有効性・望ましさが各所で議論の話題となった。「あの熱狂はどこへ・・・?話題となった各種の政策や関連提案のその後は・・・」と考え、いささか不思議な気分に陥る状況となった。関心を呼び起こして、金融規制改革を含む関連政策の現状と今後の課題をフォーラムで取り上げることとした。今回は、検討あるいは実行されつつある各種規制の現状と今後に関する概観を淵田氏にお願いし、次回(3月18日)には、東京大学の柳川範之氏に「銀行規制のあり方再検討」と題して理論的検討をお願いすることとした。
 「概観」といっても、「金融機関経営に影響する各種の規制」は多岐にわたる。関連情報の収集整理は大変な作業である。フォーラムでは、「暫定的整理」と「終わりに」で終る未定稿に沿ってお話しいただいた。今回の議論も参考にしながら今後おまとめになるとの意向である。今回の未定稿は議事録の資料としても掲載しないこととした。
内容は多岐にわたる。「目次」を見てみよう。1. 自己資本比率規制、2.レバレッジ規制、3.流動性規制、4.SIFIs規制、5.危機管理・破綻処理制度改革、6.デリバティブ規制、7.証券化規制、8.報酬規制、9.投資者・消費者保護規制強化、10.業務・規模の規制、11.シャドウバンク規制、12.その他。
 続いて、「財務への影響(主として銀行グループの場合)」、「ビジネスライン、グループ構造、グローバル展開への影響」、「そのほかの中長期的展望」に大別した「暫定的整理」が展開されている。興味深い論点が多く、フォーラムの議論も大いに盛り上がった。いずれについても、最終的なとりまとめを楽しみにしよう。
 最後に、長老からの余計な一言である。話題になり実行されつつある規制の概観となると、どうしても「政府」の周辺で動くものに関心が集中し、「そんなことを本当に実施するのか?有効か?望ましいのか?」などの視点からの検討が手薄になる。とりわけ今回のfinancial crisisの混乱の中での政府の対応についてはその懸念は大きくなる。そこで、年齢・経験・識見のすべてで卓越した専門家が集まった著名なconferenceのKenneth E. Scottの問題提起論文(Appendix -- The Financial Crisis: Causes and Lessons)のLessonsの冒頭の文章を以下に紹介する。
“What were the critical mistakes and deficiencies in the account we have just reviewed? The media, participants, and politicians have put forth a host of favorite culprits, usually shifting blame to someone else: MBSs, rating agencies, excessively compensated CEOs, CDSs, deregulation, greed, mark-to-market accounting, predatory lenders, repeal of Glass-Steagall, hybrid ARMs, short selling of bank stocks, borrower fraud, dishonest mortgage brokers, inadequate consumer protection for financial products, and so on. It would take a lot more time than I have to try to deal with each of them, and it’s probably unnecessary. Some are minor or even irrelevant to the cause of the crisis, whatever their independent merits, but I will try to take up the more salient in three broad categories: defects in financial products, defects in risk management, and defects in government policy”(Scott, Shultz, and Taylor eds. Ending Government Bailouts, Hoover Institutions Press, 2010, p.300).

 進行中の複雑多岐にわたる膨大な話題・論点を概観するという課題に挑戦し、口うるさい参加者を相手にほぼ3時間にわたって興味深い議論を展開していただいた淵田さんに深謝します。