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第41回

震災の影響もあって計画していた会合を2回中止あるいは延期した。7週間ぶりに再開した会合では、東京大学大学院の成田悠輔氏に、Olivier Jeanne (Johns Hopkins University) and Anton Korinek (University of Maryland)“Macroprudential Regulation Versus Mopping Up After the Crash”およびその基礎となった同じ著者達の “Excessive Volatility in Capital Flows: A Pigouvian Taxation Approach”, AER, May 2010について報告を受けて討議した。中心となった前者は、3月段階でも未完のdraftであった。
  「金融危機」の顕在化とともに“macro-prudential regulation”に対する関心の高まりが著しい。このフォーラムでもスタート直後の会合でGeneva Reportを取り上げて、「いずれ関心が高まるが、必ずしも明確な内容を伴わずに言葉だけが大手を振って闊歩し、コストも軽視される・・・」と予想した。半年ほどして、“macro-prudential regulation”という言葉を耳にする機会は増えたが、改めて話題にしようとの声が出ることはなかった。
 “macro-prudential regulation”として唱導される政策は、ほとんど例外なくその有効性に疑問が提示されている。さらに、金融規制の強化・再構築が必要だとしても、“macro-prudential regulation”のような事前規制ではなく、crisis発生後の対応体制の整備の方が望ましいのではないかとする見方も各方面から提起されてきた。金融関連分野の如く、どこで何が起こるかわからない(予想がむずかしい)し、事前規制の強化は新たな対応課題を次々と創造するという状況で、「万全の事前規制」は可能だとしても途方もなく高くつくと考えて、“macro-prudential regulation”に対する関心の高まりに不安を覚える人たちも多い。
 「事前規制と事後対応の適切な組み合わせが好ましいはずだ。平常時には、これが常識として議論の基盤となるのに・・・」と考える人たちに、いかにも魅力的なタイトルの論文である。当然、「危機をどのように捉えて、具体的対応策を検討するのか?」「今回のfinancial crisisにうまく対応した議論になっているか?」という関心から論文を検討することになる。
 これまでに「今回のfinancial crisisの発生メカニズムをうまく捉えきることができた」と自信を持って宣言できる経済学者は多くないだろう。そうであれば、著者達の論文に、うまい定式化と満足できる解決策を期待するのはtoo demandingであることがわかる。事前と事後の間にeventが発生するというsetupを想定すれば、たとえばt=0, 1, 2の3時点にわたる最適政策の設計問題となる。選択・設定した具体的なeventとmechanismについて興味深い結論も導いたとしても、「金融危機」対策として押し出すための「一般化」という難題が待っている。
 事前の期待にもよるが、参加者の評価・満足度はあまり高くはなく、課題の難しさを再認識することになった。タイトルが魅力的すぎるのかもしれない。「なぜこのような危機・大混乱の発生・展開を放置したのか?政府は何をしていたのか?是が非でも再発を防止しなければ・・・」「xxさんが主張していた通りだ。彼の警告を無視したから、こんな悲惨なことになった」「『想定外の事態』だなどと、無責任な言い訳は許されない・・・」などとする大合唱の盛り上がりの中でも、このような視点に立った検討が行われていることを発見して、私(三輪)も多少は安堵した。
 とはいえ、現時点ではあまり注目されていないissueに関する問題提起的な論文を見つけて紹介していただいた成田さんに深謝します。

 成田さんの報告用メモは以下からダウンロードできます。原論文に関心の方は、著者達のHPからダウンロードしてください。