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公正価値の誤用と金融危機 (『金融危機と会計規則』 中央経済社、2012年に収録)

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Abstract

この論文は,公正価値の誤用と金融危機の関係に着目して,(1)公正価値測定・評価が抱えている欠陥を確認し,(2)金融商品会計基準の誤謬を指摘するために,先行研究のレビューに加えて,概念分析を行ったものである。第1 に,公正価値測定・評価を利用した個別の会計基準をめぐる実証研究を吟味した結果,透明な開示をしても,必ずしも会計情報の有用性が向上するとはいえず,むしろ,公正価値測定・評価の曖昧さが会計情報の有用性を損なっていることが確認された。第2 に,市場の流動性が低下したときに,誰にとっても唯一の公正価値が存在しないにもかかわらず,直近取引価格(投げ売り価格)や主観による推定値が公正価値とされていた。そこで生じた経験的に説明のできない無意味な評価損の連鎖が,金融危機の発端や深刻化の原因になったと推測される。第3 に,概念分析によって,金融商品会計基準には,公正価値の誤用,あるいは濫用が含まれており,それは支配的な通説とは整合しない誤謬であることが判明した。その過ちが,金融危機の原因となったのである。この研究は,公正価値の誤用を正すことと,将来の概念研究に貢献するであろう。