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利益情報のアノマリー —利益情報の有用性は神話か?

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本稿では,利益情報の有用性研究の代表である価値関連性研究と,その対極にあるアノマリー研究,行動ファイナンス研究をレビューしている。前者の研究は効率的市場仮説を前提としているのにたいして,後者の2 つの研究は,いずれも効率的市場仮説を否定する実証結果を報告している。その実証結果が正しいならば,価値関連性があるという意味での利益情報の有用性は主張できなくなってしまう。文献レビューを通じて,以下の3 点が浮き彫りにされる。第1 に,利益株価比率(earnings to price ratio, E/P)にかんするアノマリーが存在することを報告している研究が多いが,価値関連性研究であきらかにされている知見,たとえば利益の構成要素ごとに持続性や情報内容がことなることとアノマリーの関係については,いまだに検討が十分ではなく,アノマリーの源泉があきらかになっていない。第2 に,行動ファイナンスでは投資家の意思決定の(非)合理性を問題にしているが,利益情報を「正しく理解し,正しく反応する」とはどういうことであるのかが,明確にされていない。利益情報には,良いニュースか悪いニュースかという白黒がはっきりとしない複雑で曖昧な情報が含まれているという視点が,行動ファイナンスの研究には欠落している。第3 に,アノマリーを計算するときの正常リターンの計算方法が,いまだに確立されていない。たとえば負債比率がリスク・ファクターになっているという実証研究もあるものの,その負債のなかには,学問的基礎づけが怪しいものも含まれている。会計上の擬制負債(constructive obligation)が実態上のリスクを規定するのかは,さらなる検討が必要である。
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