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問題企業の復活:「失われた20 年」の再検証

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わが国では,バブル崩壊後の「失われた10 年」において,経営再建の見込みが乏しい,いわゆる「ゾンビ企業」を存続させたことが,経済の回復を遅らせた主要な原因の1つであると指摘されてきた.しかし,かつて「ゾンビ企業」と呼ばれた企業で,2000 年代半ばまでに破綻や上場廃止に追い込まれた企業はごくわずかで,存続した「ゾンビ企業」の大半は業績を大きく改善させた.その一方,2000 年代には不良債権比率が大幅に低下したにもかかわらず,日本経済の成長は限定的で,経済のデフレ状態も持続した.本稿では,Fukuda and Nakamura(2011)で用いたデータを,世界同時危機という大規模な負の外的ショックに見舞われた2008 年度まで延長したうえで,多項ロジット・モデルの推定を行い,「ゾンビ企業」の復活要因に関する含意を再検証した.その結果,前向きなリストラクチャリングが復活の有効な手段であったことを示唆すると同時に,売上高の伸びは不良債権処理が進んだ以降も復活に有意なプラスの効果を与えなかったことを明らかにした.これらの結果は,「ゾンビ企業」の復活はコスト・カットによるところが大きく,売上高の伸びのように収入増の要因は小さいことを示唆するもので,コスト・カットが銀行の不良債権問題や企業の過剰債務問題を解決する上では有効であったことを物語る.しかし,売上高が伸び悩む中でのコスト・カットは,デフレの新たな原因ともなり,2000年代の日本経済にもう1つの「失われた10 年」を生み出した可能性がある.
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