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四半期在庫投資データの激しい変動は重大な関心に値するか?:日本のGDP 統計(1994−2010)の研究

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 半世紀以上にわたり在庫投資はマクロ経済変動の主要因の1 つとして注目され続け、その実相と変動メカニズムがマクロ経済学の中心的研究課題として繰り返し取り上げられてきた。他方、ミクロの企業行動に詳しいビジネスマン、ミクロ経済学者の側からしばしばこの見方に対する強い違和感が表明された。  本論文では、日本の品目別・形態別四半期SNA 在庫投資統計(1994〜2010)を用いて、四半期在庫統計および在庫投資行動について検討し、次の2 つの結論を得た。第1 に、「速報性」の要請に応えて厳しい制約条件下で作成される四半期統計には極端な規則的季節変動があり、これが四半期在庫投資統計の激しい変動の支配的原因になっている。この変動は年次統計ではほとんど影をひそめる。第2 に、在庫投資は激しく変動するとする通念が在庫投資変動研究への高い関心の基盤となっている。Lehman Shock 前後の時期の在庫変動の実相とその事後調整過程に焦点を合わせて検討し、最も激しい在庫変動が帰結として予想される「予期せざる」大きな外生的ショックによってさえ、通念が示唆するような在庫の積み増しとその長期間にわたる事後調整がほとんど発生しないとの結論を得た。2 つの結論は、在庫投資変動への強い関心に対して表明されてきた違和感を支持する。  日本は基礎となる統計情報などの面でOECD 諸国中最も恵まれた条件下にある国の1 つである。日本の四半期SNA 在庫統計に基づく本論文の結論は、各国の在庫統計の作成過程・基本統計にまで遡った検討への関心を刺激するだろう。また、在庫投資の内容の多様性に対する関心を高めて従来の在庫投資研究の見直しを進めるはずである。さらに激しい在庫投資変動に関する通念と表裏一体の金融政策波及経路等に関する研究にも重大なimplication がある。
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