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会計基準研究における対象領域の拡大 —のれんの規則的償却に係る論拠の変遷—

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Abstract

 本稿では会計基準開発を取り巻く環境変化に伴い、「会計基準の体系性を保つべし」という要請が無意識のうちに損なわれたり、弱まったりしているかどうかを主題としている。  具体的な事例として採り上げたのれんの会計処理であり、企業会計基準委員会(Accounting Standards Board of Japan: ASBJ)がのれんの規則的償却をどう論拠づけてきたのかをレビューし、調査結果を集計・分類した。  調査の結果は、基準開発を取り巻く環境変化にかかわらず、ASBJのスタンスが概ね一貫していることを示唆していた。  ただし原則として「のれんは減価する」という前提に根ざした議論が展開されているにもかかわらず、その前提とは必ずしも整合しない議論が行われているケースもみられた。  こうした不整合は暗黙裡に生じており、その事実を見出すには高度に学術的なスキルが求められる。学界関係者の基準開発への関与が低下している今日、同様の不整合が今後も生じる可能性は否定できない。その事実は、無意識のうちに生じた不整合の事実とその影響を明らかにすることを目的としたものへと会計基準研究の対象領域が拡大する可能性を示唆している。
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