ワーキングペーパー

マクロ金融

J-series

作成:

番号:CARF-J-114

コロナ禍の経済的計測

著者:岩本康志

Abstract

新型コロナウイルス感染症の影響(コロナ禍)を経済学的に適切に計測する、という観点から、健康と経済のトレードオフの描写、従来の経済危機に見られない影響の異質性の的確な把握、感染症対策に有益な情報を提供できる計測の適時性、の3つの課題を検討する。
感染症対策によって最小化すべき被害のなかの人的被害(死亡者の貨幣価値化された厚生損失)は死亡者の所得よりも大きな統計的生命価値で評価する必要がある。健康と経済のトレードオフのもとで選択された対策では増分費用効果比(人的被害を軽減するために必要な経済的被害)で換算した総被害が最小化されているので、増分費用効果比と統計的生命価値が乖離しているかどうか、が問題となる。
影響の異質性の把握には、労働をタスクに細分化し、「非接触・接触」に対比させることが有用である。生産性の低い企業や脆弱な労働者が大きな影響を受けたことは、「接触型タスクは生産性が低い」という仮説によって説明することができる。
迅速に経済の状況を把握できるオルタナティブデータの活用が図られたものの、政策実施の点からも重要な所得の迅速把握には実務上の課題が大きい。行政記録での所得の迅速把握を目指さなくなれば、経済分析のためのデータ整備も非常に困難であると考えられる。

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