世界からのメッセージ

ウイリアム F. シャープ(William F. Sharpe)

スタンフォード大学名誉教授(STANCO 25 Professor of Finance, Emeritus)

 

略歴

カリフォルニア大学(ロサンゼルス校)経済学博士
1970年よりスタンフォード大学で教鞭をとる。

メッセージ

日本初の本格的な金融大学院ができることになり、心から嬉しく思います。欧米では、金融の研究・教育はビジネススクールと経済学部が互いに競争し、補完する関係にあります。東京大学が企画する金融プログラムは、資産運用理論、コーポレート・ファイナンス、デリバティブから会計学、ゲーム理論、ミクロおよびマクロの金融政策までを網羅するプログラムです。このような包括的な金融プログラムは世界でもはじめての注目すべき試みです。また、日本をはじめアジア環太平洋地域の金融データを活用した研究・教育についても、その成果を大いに期待します。

マイロン S. ショールズ(Myron S. Scholes)

スタンフォード大学名誉教授(Frank E. Buck Professor of Finance, Emeritus)
オークヒル・プラチナ・パートナーズ会長

略歴

シカゴ大学経済学博士
MIT、シカゴ大学、スタンフォード大学で教鞭をとる。

メッセージ

私は、35年余り、デリバティブの評価や利用について研究してきました。先物、オプションなどのデリバティブは、経済の歪みを正し、資源やリスクの配分を効率化するために大変有効な働きをします。日本経済、なかでも金融セクターは、長い間、過去の制度が桎梏となって、潜在力を有しながらもそれを発揮する機会を見つけられない状況が続いてきました。経済の複雑化・国際化に伴って、ショックはより頻繁に、またより大きなスケールで起きるようになります。オプション理論の教えるところによれば、変化が大きくなればなるほど柔軟性が経済に大きな価値をもたらします。それは、知性のチームワークこそが、壁を突き破るための知恵や仕組みを発見し、新しい機会を生み出すからです。東京大学に設立される金融大学院は、日本が現在直面している困難に挑戦するために必要な多様な才能を集め、世界が注目するショーケースになるでしょう。おめでとうございます。新しい大学院と金融研究センターが大いに成功することを期待しています。

スタンレー フィッシャー(Stanley Fischer)

イスラエル銀行(中央銀行)総裁

略歴

MIT経済学博士
シカゴ大学、MITで教鞭をとった後、国際通貨基金(IMF)の要職につく。2002年よりシティグループ副会長、シティグループインターナショナル社長。2005年より現職。

メッセージ

東京大学が金融論とコーポレート・ファイナンスに焦点を当てた新しい教育プログラムと研究センターをスタートさせるというニュースを聞いて、大変喜んでいます。米国では、政府、企業、学界の三者間に健全な交流があり、大学の教授が政府に移動したり、またアカデミズムに復帰したりというようなことが頻繁に起こります。東京大学に新しい研究センターができることにより、このような交流が日本でも一層盛んになることと思います。それは、日本経済の発展に大いに貢献することになるでしょう。東京大学の新しいプログラムは、米国のビジネススクールで行われるコーポレート・ファイナンスの教育と、経済学部で行われる金融政策の教育の両方に力を入れると聞いています。これはとても注目すべき試みです。また、日本を含むアジアの国際金融政策に関する研究を促進しようという計画も、大変重要なものです。 おめでとうございます。この新しい計画が素晴らしい成果をもたらすことを期待します。

ロバート C. マートン(Robert C. Merton)

ハーバード大学名誉教授(John and Natty McArthur University Professor, Emeritus)

略歴

MIT経済学博士
長年MITスローン・スクールで教鞭をとった後、1988年にハーバード・ビジネススクールに移籍。

メッセージ

日本の第一線の研究者が政府と企業の強力な支援を得て、東京大学に金融経済学の新しい研究組織を設立することを知り、心から嬉しく思います。この計画は、ファイナンス研究における世界的競争を強く意図していると聞いています。また、新設される金融研究センターでは、アジア・太平洋圏の金融市場をカバーする総合データベースが構築されると聞いています。アジア・太平洋圏金融市場は、世界経済の中でますます重要な役割を担うようになっています。こうした環境の下で、東京大学における新しい研究センターが、一流の金融研究者が集まって重要な研究課題に共同で取り組む世界的な拠点になるものと思い、その活動に大きな期待を寄せるものです。

ステファン A. ロス(Stephen A. Ross)

MIT教授(Franco Modigliani Professor of Finance & Economics)

略歴

ハーバード大学経済学博士
ペンシルベニア大学、エール大学、MITで教鞭をとる。

メッセージ

この度、東京大学がファイナンス研究・教育の一層の強化のために新しい大学院プログラムと金融研究センターを新設するというニュースを聞いて、大変嬉しく思っています。世界で最も優れた大学の一つである東京大学がその資源を金融の研究と教育に重点的に投下することは、金融という分野の重要性を世界に向けて表明するものであり、この分野の研究・教育の一層の発達に大きな貢献をすることになるでしょう。私は経済学者の一人として、競争こそ社会の進歩をもたらす強力な原動力であると信じています。米国の強力な競争相手が、ビジネス界だけでなくファイナンス研究の分野でも出現するわけですが、このことを心より歓迎したいと思います。

アラン S. ブラインダー(Alan S. Blinder)

プリンストン大学教授(Gordon S. Rentschler Memorial Professor of Economics)
同大学経済政策研究元センター長

略歴

MIT経済学博士
1971年よりプリンストン大学で教鞭をとる。

メッセージ

新しい金融研究センターと金融大学院の誕生にお祝いを申し上げます。私は長い間、日本の大学が現実の経済問題の理解や適切な経済政策の策定に役に立つ応用研究をもっと進める必要があり、その能力もあるはずと考えてきました。東京大学での新しい試みは、世界各地からの実業界、また政策担当者との様々な共同プロジェクトを実施することによってこうした方向に踏み出そうとしています。教授陣も外部とのコミュニケーションのノウハウを持った人達が選ばれています。さらに、企業金融と金融論の二つの分野を一つの組織にまとめている点も大変な強みとなるでしょう。ますます緊密性を増すアジア各国の経済、金融市場に関する研究を重視している点も評価できます。すばらしい成果を目にすることを待ち望んでいます。

ブルーノ ソルニック(Bruno Solnik)

HECスクール・オブ・マネジメント(フランス)特別名誉教授(Distinguished Emeritus Professor of Finance)

略歴

MIT経済学博士
スタンフォード大学、HECで教鞭をとる。

メッセージ

金融システム専攻の創設に心から拍手を送ります。ヨーロッパ大陸でも、最優秀の学生がファイナンスの高度専門家を目指して競い合う時代になっていますが、東京大学が海外の講師陣にも門戸を開いてすばらしいカリキュラムを提供することは、アジアの大学院生にとって大きな恩恵となるにちがいありません。優秀なファイナンスの研究者にはアジア人も多く含まれていますが、教育・研究のグローバル化を標榜する大学院が東京大学のキャンパスに誕生することによって、日本人の名前を冠した理論やモデルがファイナンスの分野でいくつも誕生することになるでしょう。

ステファン H. ペンマン(Stephen H. Penman)

コロンビア大学教授(George O. May Professor of Accounting)
同大学会計・証券分析高等研究所長

略歴

シカゴ大学会計学博士
長年、カリフォルニア大学バークレー校の会計学教授(L. H. Penney Professor of Accounting)を務めた後、1999年にコロンビア大学に移籍。

メッセージ

私は、長年にわたる研究で、企業の真の実力、すなわち企業のファンダメンタル・バリューを知る大変重要な手がかりが、会計情報の中に埋もれていることを明らかにしてきました。日本経済は世界のトップグループを走っているにもかかわらず、会計学の実証的な研究が世界の学界に向かって発表されることはあまりありませんでした。会計・ファイナンス分野の実証的な研究には、豊富なデータベースが必要ですが、日本の大学ではデータベースおよび人的研究支援体制の整備が遅れているという事情があると聞いています。東京大学に今回新たに計画される金融研究センターは、こうした問題を克服することを強く意図して設立されるということです。私はこの目的に大きな拍手を送ります。また、このセンターは国際的な共同研究の実施に力を入れるということです。東京大学に集う気鋭の研究者諸氏が、日本やアジアの企業の会計の仕組みや、会計情報と企業評価の関係を明らかにして、世界に披露してくれるのを楽しみにしています。また、そうした基礎的な分析は、金融市場の効率化に貢献し、日本経済の発展につながるにちがいありません。

ダグラス T. ブリーデン(Douglas T. Breeden)

デューク大学教授(William W. Priest Professor of Finance)
2001年から2007年までデューク大学ビジネススクール・ディーン

略歴

スタンフォード大学経済学博士
シカゴ大学、スタンフォード大学、デューク大学のビジネス・スクールで教鞭をとる。

メッセージ

金融システムは、現在の資本主義に欠かすことのできない社会のインフラストラクチュアです。近年、日本のバンキング・システムが機能不全に陥ったことは世界で広く知られています。これは、金融機関の間の健全な競争の欠如が、銀行経営者を経営とリスク管理上の原理の追求に駆り立てなかったことが大きな原因であったと思います。 経済の健全な成長と発展のためには、金融機関や証券市場の機能を研究することが大変重要です。このたび東京大学に誕生する金融大学院が、アジアだけでなく、世界経済の知的インフラを形成してくれることを期待します。金融研究における知の競争が、世界経済の発展に多大な貢献をすることはいうまでもありません。そのプレーヤーとして東京大学が持てる実力を大いに発揮されることになるでしょう。同時に、東京大学の金融大学院とデューク大学ビジネススクールの間でよい協力関係が築けることも期待しています。

ダレル ダフィ(Darrell Duffie)

スタンフォード大学教授(James I. Miller Professor of Finance)

略歴

スタンフォード大学経済学博士
1984年よりスタンフォード大学で教鞭をとる。

メッセージ

ダイナミックかつ複雑に変貌し続ける金融業界において、日本の国際的な影響力と役割は大きく、一流の研究者はもとより、真の意味で高度に金融を理解した政策担当者、企業人の育成が急務です。日本でもっとも優秀な若者を集める東京大学に、金融に特化した本格的な大学院プログラムが誕生することの意義は重く、非常に期待するところです。

フランクリン アレン(Franklin Allen)

ペンシルベニア大学教授(Nippon Life Professor of Finance)

略歴

オックスフォード大学経済学博士
1980年よりペンシルベニア大学で教鞭をとる。

メッセージ

東京大学にこの度新設される大学院金融システム専攻に強く期待します。金融システムを正しく機能させるという課題は、日本やアジアの経済のみならず、世界経済にとってきわめてプライオリティの高い課題です。この時期に日本で金融システムに関する研究と教育を専門とする大学院ができることは非常に喜ばしいことです。遠くない将来に、この大学院から優秀な人材が多数輩出され、世界の金融システムに必ず大きな貢献をしてくれることでしょう。

 

アニール カシャップ(Anil Kashyap)

シカゴ大学教授(Edward Eagle Brown Professor of Economics and Finance)

略歴

MIT経済学博士
米連邦準備理事会(FRB)でスタッフ・エコノミストとして従事した後、1991年よりシカゴ大学で教鞭をとる。

メッセージ

東京大学が新しい金融専攻の教育及び研究プログラムを立ち上げることを知り、喜びに耐えません。企業金融と金融政策の両分野を東京という都市で一つのプログラムの中にもつことによって、東京大学の優れた教授陣と日本のトップクラスの経営者、政策担当者間の交流が促進されます。こうした交流はすべての人にとって利益になるでしょう。しかも、対象になる金融政策分野はマクロ政策だけでなく、金融システムの機能やその最適なデザインを含むと聞いています。私自身、日本の金融システムの特徴、そしてそれがここ10年前後抱えてきた不良債権問題をはじめとするいくつかの深刻な問題について関心をもち、さまざまな角度から研究を進めてきました。東京大学の新しいプログラムにおいて、こうした分野における目覚しい研究成果があがることに強く期待しています。