CARFについて

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センター長ご挨拶

CARFセンター長
植田健一 教授 CARFセンター長
植田健一 教授

2022年度より新たにセンター長となりました植田健一です。核となるミッションは変わりません。

 

東京大学大学院経済学研究科附属 金融教育研究センター(Center for Advanced Research in Finance、略称CARF)は、アジア環太平洋における金融研究の中心的役割を担い、理論的ならびに実践的な金融研究を推進することによって、世界経済およびアジア経済の健全な発展に資することをミッションとしています。この目標を達成するために、CARFは国際的でオープンな研究センターを目指しています。

 

世界経済におけるアジア経済およびアジア企業の重要性が急速に高まる中で、日本の金融・資本市場はアジア経済圏の発展に積極的な役割を果たさなければなりません。高度成長を遂げつつあるアジアの近隣諸国の中には、いまだに巨額の資金を必要としている国々があります。

 

その一方、日本で進行してきた高齢化と、それに伴う財政状況の悪化により、老後の生活資金の確保のために、賢い貯蓄と投資が日本の家計にとってますます必要となってきています。(こうした貯蓄や社会保障の研究も進んでいます。)ところが、これまで蓄えられた資金と人口減は、日本における投資機会の低下をもたらしてきており、資金需要が旺盛なアジアの近隣諸国により投資をしていくことは避けられません。とは言え、同様の高齢化問題には、韓国や中国なども既に面してきており、日本だけでなく、アジア圏全体の問題として捉えなければなりません。

 

つまり、需要面からも供給面からも、より一体化したアジア圏内そして世界の資金フローが必要となります。しかしながら、巨額の資金の急な動きは、国内的には不動産価格のバブル、その後の銀行危機、国際的には通貨危機、経常収支危機といった、広い意味での様々な金融危機の一要因とも言われ、各国で警戒感があることも否めません。

 

このような状況の中、アジア環太平洋における金融センターとして十分な機能を果たすために、日本市場や日本の金融システムをどのように整備すべきでしょうか。そしてアジア諸国さらに世界に、どのような発信をすべきでしょうか。そうした金融制度のデザインや政策提言は、CARFの最も重要な研究テーマになります。特に、過去の日本の金融システムの成功と失敗を、ミクロとマクロおよび理論と実証という多面的な側面から研究して、日本およびアジア近隣諸国の今後の発展に活かしていくことも、CARFの重要な役割です。

 

一方、実務において、様々な企業や基金等において、資金運用・資金調達・リスク管理の手法がそれぞれ進化していくことが不可欠です。それぞれの革新的な進化を促すための金融理論研究は、国を問わず重要であり、CARFにおいても主要テーマとして推進してきています。また、国際的に調和が取れ、わかりやすい会計の仕組みを実現することは、企業財務そして企業への投資の基盤となります。優れた会計制度、企業統治(コーポレートガバナンス)及び債権者・債務者保護は、またそれらの国際的な調和は、安心してそれぞれの国における金融資本市場の発展、また各国間での投資が促進されるために不可欠なものとも言えます。CARFはこうした研究も主要テーマとして取り組んでいます。

 

近年は、発展途上国への投資を中心に、環境、社会的責任、(コーポレート)ガバナンスという3点に特に留意した、いわゆるESG投資の姿勢が重要視されるようになってきており、気候変動リスクの高まりとともに、避けては通れない要素となっています。上述の様々な研究分野において、このような投資姿勢についても、CARFにおいて国際コンファレンスを開催するなど対応してきており、一層の研究活動の充実を図っています。

 

投資や貯蓄だけでなく、決済の分野でも、近年新たな動きが急速に興っています。いわゆるフィンテック、暗号資産、中央銀行デジタルカレンシーといった革新が起きてきていますが、CARFにおいてもいち早く研究を進めてきており、この分野の日本の中心的な発信地となっています。今後も、決済システムの国際的な競争が激しさを増し、調和の必要がますます必要となる中、引き続き研究と発信に注力していきます。

 

CARFは、これら多種多様な研究を3つの基本方針で推進しています。第1は、世界から第一線の研究者を招聘し、アジアそして世界が面している問題に取り組み、最先端の理論、実証研究に取り組むことです。そのために各国の主要大学・研究機関等と緊密な協力関係を結んできています。第2は、産業界や政策当局と連携して、産学共同、官学共同の研究プロジェクトに取り組むことです。企業、市場、経済の実態に関する実務家の知識・経験や実践的な問題意識とアカデミックな理論・思考の枠組を結合することによって、金融システムに関しては正しく機能させるための制度や政策を構想し、また金融技術や資金運用・リスク管理に関しては革新的な手法を開発することを目指しています。第3は、金融分野の研究を深化していくために不可欠なデータベース環境の構築です。CARFでは、広範なミクロとマクロの日本と世界の経済金融データ、中でもアジアの金融・資本市場に関するデータベースを充実させ、国内外から研究者を集めて実証研究を進めてきています。デジタル化の急速な進展とともに、より詳細なデータベースが新しく世に現れ、必ずしも低額で利用できるわけではないことから、必要額が年々増大しているという現状がありますが、引き続き、研究のセンターであり続けるためのデータベース環境の充実を図っていきます。

 

CARFの研究成果は、研究論文、書籍、ホームページ、ワークショップ、特別セミナー、国際コンファレンスなど、さまざまな形で世界に積極的に発信しています。CARFは、今後とも、金融研究を推進する世界有数の拠点として、みなさまのご期待に応える活動を実施していきます。

 

東京大学大学院経済学研究科附属 金融教育研究センター
センター長 植田健一

概要

東京大学大学院経済学研究科附属 金融教育研究センター(Center for Advanced Research in Finance, CARF)は、金融研究・教育のアジアにおける世界的拠点となることを目的に、2005年4月東京大学に設置されました。

CARFは、以下の4つのミッションを掲げて活動を行っております。

MISSION 1

世界から第一線の研究者を招聘して、金融経済学の先端理論研究を推進します。

MISSION2

質・量ともに充実した金融データセンターを構築し、
とりわけアジアの金融・資本市場に関する実証研究を推進します。

MISSION3

アジア経済のバランスのとれた発展を支援するために、
日本型金融システムの成功・失敗の経験を理論・実証の両面から分析し、
健全な経済発展のためにあるべき金融システムのデザインや政策提言を行います。

MISSION4

産業界・金融界と連携して研究開発を行い、最先端の資金運用・資金調達・リスク管理の手法開発を行うとともに、21世紀の金融を担う研究者、リーダーを育成します。


CARFは文部科学省から「産学連携施設」に認定されており、その運営資金は政府支出のほか、広く産業界・金融界からの支援を受けてまかなわれています。

歴代センター長

2005年4月-2008年3月氏家純一
2008年4月-2011年10月貝塚啓明
2011年11月-2014年2月新井富雄
2014年3月-2016年3月植田和男
2016年4月-2017年3月渡辺 努
2017年4月-2022年3月植田和男
2022年4月-現在植田健一

 

研究領域

当センターの研究領域は次の4つに大別されます。
※2020年度まで「金融システム」と「マクロ金融」は一つの研究領域に分類されていました。

金融システム

金融危機はなぜ起こるのか、効率性を損なわずに頑健性を高めるような金融規制及び監督政策の在り方はどのようなものかが、一つの中心課題です。日本の銀行危機、世界金融危機などを経て、この分野の研究は進み、国際金融規制などの背景となってきましたが、未だに理論的にも、実証的にも解明すべきことが多い状況です。

さらに、近年のフィンテック企業や暗号資産・デジタル通貨等の新しい動きは金融仲介にどのような影響を及ぼすのか、既存の金融規制などに改善余地があるかなど、新しい問題が現れてきました。気候変動リスクという新しいリスクも強く意識されるようになりました。特に保険業を中心にこれまでの想定とは異なる大きさの損害の推計が必要であり、一般企業も広く影響を受けることから、銀行貸出などにおけるリスクにもつながります。

構造的な企業金融のあり方も重要です。いわゆるゾンビ企業の問題が日本経済の低迷と絡んでこれまでも研究されてきましたが、世界金融危機、大震災、コロナ禍などを受け、企業向け補助金や公的金融の役割が強くなっている状況です。一方、一般的な民間資金による企業金融は、コーポレートガバナンスや倒産法制など、様々な制度に依存します。どのような企業金融がありうべき姿なのかは社会的にも関心の高い問題となっています。

金融危機に絡んだ問題、金融進化への対応、企業金融の構造的な問題は、いずれも喫緊の課題を金融システムの制度設計に投げかけており、それらを学術的に研究し、実務家、政策担当者とともに解明していきます。 

マクロ金融

主に物価・金融政策、バブルの問題、社会保障・財政政策とマクロ経済の関連、国際金融への影響などについて、学術的に研究をし、実務家、政策担当者とともに解明していきます。

物価に関しては、様々なモノやサービスの値段である「ミクロの価格」がどのようにして決まるのか、そしてそれが「マクロの物価」とどのように関連するかを解明します。日本の長期デフレなど各国の物価変動の理由を探るとともに、生活者の感覚に合う物価指数を開発します。

バブルの問題は、日本の80年代の地価バブルや2000年代の米国のサブプライム住宅バブルに代表されます。そのような、資産価格の急激な高騰と暴落のメカニズムと、それがマクロ経済の変動にどの様に関連しており、制度や政策がどのように影響を与えているかを解明します。

中長期的にはマクロ経済と金融は、高齢化などの貯蓄と消費のバランスに関する構造的な諸要因に影響されます。それらのメカニズムを理論的、実証的に解明します。とりわけマクロ経済において、貯蓄を投資へ誘導する金融システムの効率性と頑健性について分析します。

これらのマクロ経済の事象は、日本のような国際的に開かれた国において、為替や経常収支の動向に大きい影響を与えます。そこで、国際金融の側面も注視しつつ、研究を進めます。特に発展途上国への投資は、環境問題や労働基準なども含めたサステイナブルな経済開発(SDGs)の観点も求められ、いわゆるESG投資の動向も考察します。

数量ファイナンス

状態空間モデル、ファジィ・システム、機械学習を活用した新しい資産運用法を提案しています。また、近年注目されている、ボラティリティの変動、信用リスク,担保契約等を考慮した金融資産価値の新しい評価方法や数値計算法の提案と、それらの数理的基礎付けを行っています。

さらに、流動性の低い資産を原資産とするデリバティブの価格付けや、ビッグデータを用いた高頻度取引市場の分析、ホテルのrevenue managementの分析も行っています。

会計

会計情報が証券市場で、あるいは当事者間における利害調整の局面で果たしている役割を解明します。これと併せて、会計情報を生み出している会計基準の体系がどのような理論に支えられているのか、その合理性も検討対象とします。具体的には、IFRS(国際財務報告基準)を日本の証券市場においてどのような形で受け入れられていくのか、という問題に長年にわたり取り組んでいます。最近は、会計制度に関する事後評価のあり方も検討対象としています。

また不正会計を規定する要因を包括的に探究し、それらの要因にもとづいて、不正会計予測モデルを構築する試みや、経営者報酬契約における会計情報の役割を解き明かす試みにも着手しています。

研究者はこちら

世界からのメッセージ

ウイリアム F. シャープ(William F. Sharpe)
スタンフォード大学名誉教授(STANCO 25 Professor of Finance, Emeritus)

マイロン S. ショールズ(Myron S. Scholes)
スタンフォード大学名誉教授(Frank E. Buck Professor of Finance, Emeritus)
オークヒル・プラチナ・パートナーズ会長

スタンレー フィッシャー(Stanley Fischer)
イスラエル銀行(中央銀行)総裁

ロバート C. マートン(Robert C. Merton)
ハーバード大学名誉教授(John and Natty McArthur University Professor, Emeritus)

ステファン A. ロス(Stephen A. Ross)
MIT教授(Franco Modigliani Professor of Finance & Economics)

アラン S. ブラインダー(Alan S. Blinder)
プリンストン大学教授(Gordon S. Rentschler Memorial Professor of Economics)
同大学経済政策研究元センター長

ブルーノ ソルニック(Bruno Solnik)
HECスクール・オブ・マネジメント(フランス)特別名誉教授(Distinguished Emeritus Professor of Finance)

ステファン H. ペンマン(Stephen H. Penman)
コロンビア大学教授(George O. May Professor of Accounting)
同大学会計・証券分析高等研究所長

ダグラス T. ブリーデン(Douglas T. Breeden)
デューク大学教授(William W. Priest Professor of Finance)
2001年から2007年までデューク大学ビジネススクール・ディーン

ダレル ダフィ(Darrell Duffie)
スタンフォード大学教授(James I. Miller Professor of Finance)

フランクリン アレン(Franklin Allen)
ペンシルベニア大学教授(Nippon Life Professor of Finance)

アニール カシャップ(Anil Kashyap)
シカゴ大学教授(Edward Eagle Brown Professor of Economics and Finance)

活動報告書

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YouTubeチャンネル(動画)

東京大学大学院経済学研究科附属 金融教育研究センター(CARF)のチャンネルが開設されました。
シンポジウムやセミナーの動画をアップしていく予定です。

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