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会計基準と金融規制 (『金融危機と会計規則』 中央経済社、2012年に収録)

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Abstract

本論文の趣旨は、会計基準が金融危機の発生に及ぼした影響に関するシナリオは、会計基準と金融規制(なかでも国際決済銀行による自己資本比率規制)との関係をどう考えるのかに応じて異なる旨の指摘にある。会計基準が介在して金融危機が引き起こされた、とする主張の多くは、「会計基準の介在」がただちに「会計基準有責任論」に結びつくことを暗に与件としている。しかし、たとえ会計基準のあり方が金融危機の発生と関わっているとしても、金融危機の発生に関する主要な責任を会計基準のあり方に帰させられない場合も存在する。多様なケースを念頭に置かなければ、事実を見誤ってしまうおそれがある、というのが本稿の指摘である。これと併せて本稿では、近い将来に予想される主要な会計基準の新設・改訂が会計基準と金融規制との関係に及ぼしうる影響も検討している。当期純利益に代えて包括利益を中心に据えて行われる業績報告や、「利益操作の排除」を重視して行われる資本と負債の新たな区分はいずれも、投資家向けの利益を金融規制目的に用いるのを困難とすることが本稿の考察を通じて明らかとなる。