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純利益と「その他の包括利益」−両者の分類規準をめぐる通念の検証−

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Abstract

本稿の研究主題は、「当期純利益は曖昧にしか定義できず、それゆえ当期純利益に依拠した概念フレームワークは機能しない」という通念の検証にある。本稿では当期純利益と「その他の包括利益(OCI: Other Comprehensive Income)」との区分に関する国際会計基準審議会(IASB)の改善提案、およびIASBによる提案の理論的な支柱と考えられるRees et al.[2012]をレビューし、それぞれの議論に内在する問題点の析出に努めている。例えば概念定義と操作的な定義とが区別されるように、ひとくちに定義といってもさまざまな次元がありえ、すべての状況において定義から曖昧さを完全に排除することが、目標の達成(例えば投資家の意思決定に有用な情報の提供)にとって最善の選択とはいえない。そうした点にてらしてみても、標記の「通念」は経験的な事実の裏付けを欠いている、というのが一連の考察から引き出されてきた含意である。この含意にもとづき、本稿では最後に、「実現」「稼得」などの、「当期純利益に固有の特質として伝統的に受け入れられてきたもの」に関連づけた定義を試みている。
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