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「不完全なお金」としてのデジタルトークン

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Abstract

元来、「トークン」とは、限定的な状況において硬貨の代わりとして用いられる「代用貨幣」を指す用語であるが、最近は、「民間主体が(暗号資産・仮想通貨の技術を用いて)独自に発行したデジタルな交換手段」といった意味で使われることが増えてきている。しかしながら、最適通貨圏の議論を踏まえれば、法定通貨の流通圏の経済的な統合度が十分に高い場合、その中に独自のデジタルトークンの流通圏が存在する状況は、経済の効率性を損ねると考えられる。様々な主体が「お金のようなもの」を発行することは、社会的に望ましいことだろうか。
本稿では、こうした問題意識に対し、デジタルトークンは、金銭では媒介することが難しい取引の一部を促進すること、また、社会包摂を重視する立場からは、デジタルトークンが生む非効率性を社会が甘受することが正当化されうることが示される。具体的には、まず、repugnant transactionの議論を踏まえ、金銭が持つ汎用性や一般的受容性などの特徴を伴わないデジタルトークンが、「金銭では交換が難しい財・サービスの交換を促進」する可能性を論じる。次に、流通範囲をコミュニティ内に限定したデジタルトークンが、「金銭では実現できないアプローチでコミュニティを活性化」し、社会包摂を促進する可能性(メンバーの承認欲求の充足や社会参画意識の醸成)を指摘する。これらを通じて、デジタルトークンが、金銭が交換手段として持つ性質をあえて欠落させた「不完全なお金」として振舞うことで、金銭では実現できないことを達成できる可能性が示される。

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