ワーキングペーパー

マクロ金融

J-series

作成:

番号:CARF-J-116

日銀のトリレンマ

著者:渡辺努,庄司俊章

概要

日銀のYCC(イールドカーブ・コントロール)を巡る混乱は為替の固定相場の崩壊に譬えられる。しかし固定相場制は原理的には維持可能なものだ。それにもかかわらず崩壊するのは、為替相場の固定に割り当てるべき金融政策をその他の目的(国内景気の安定など)で使おうとするからだ。つまり、固定相場制が崩壊するのは二兎を追ったときだ。YCC を巡る混乱もこれと同じで、日銀が10 年物国債金利とオーバーナイト金利という二兎を追っていることに原因がある。日銀が10 年物国債金利をコントロールしようとすること自体は決して不適切なことではない。しかし日銀が本当にそうしたいのならば、二兎を追うことなく、オーバーナイト金利の決定は市場に委ねるべきだ。ただし、その場合、オーバーナイト金利は大幅なマイナスとなることを覚悟する必要がある。オーバーナイト金利の大幅マイナスを回避しつつ10 年物国債金利のコントロールを続けるというオプションはない。

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