ワーキングペーパー

金融システム

J-series

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番号:CARF-J-041

買収防衛策導入の業績情報効果:2005年日本のケース

著者:広瀬 純夫/藤田 友敬/柳川 範之

Abstract

本研究では,2005年に買収防衛策を導入した企業を対象にして,経営陣が防衛策を導入する動機および防衛策導入の影響について実証分析を行った.まず,2005年に買収防衛策を導入した企業の2005年度末の業績パフォーマンスを分析したところ,有意に悪化していることが確認された.これは防衛策導入直後の業績悪化であり,防衛策導入の結果とは考えにくい.よって,市場の評価以上の業績悪化を把握した経営者が,防衛策を導入したと考えることができる.この結果は,取締役解任要件の変更など取締役に関連する規定の定款変更を行った企業や,ライツ・プランなどの明示的な買収防衛策を導入した企業において顕著である.そして,株価のイベント・スタディを行ったところ,この業績変化と整合的な株価変化が確認された.つまり,市場は買収防衛策導入という行動を通して,予想以上の業績悪化の可能性を読み取っており,その結果超過収益率が有意に低下している.また,業績パフォーマンスの場合と同様に防衛策のタイプで分類したところ,市場参加者は,明示的な買収防衛策の方に,よりネガティブな判断をしていることが明らかになった.さらに,Simple Qに基づいて導入企業を分類して株価のイベント・スタディを行ったところ,Simple Qが1以上のケースではイベント・ウィンドウを10営業日後以降まで拡大すると,有意な株価変化を確認できなくなるのに対して,Qが1以下のケースでは,公表日から35営業日後までイベント・ウィンドウを拡大しても,1%水準で有意な負の平均超過収益率を確認することができた.

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