会計
J-series
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番号:CARF-J-083
利益率の平均回帰傾向(3) – 法人企業統計データの産業別分析(1)-
Abstract
この論文は,法人企業統計データを対象にして,利益率の平均回帰傾向を産業別に分析したものである。企業の利益率が所属産業の平均を上回る(下回る)とき,その差である超過利益率が大きい(小さい)ほど,将来,企業の利益率は大きく低下(上昇)する。利益率は産業平均に向けて回帰する傾向をもつという経験的証拠は,サンプル数が多い特定の産業だけに依存してはいない。広く横断的に,多くの産業において,利益率の平均回帰傾向が観察された。そのことを,たんに産業別に回帰分析するだけでなく,回帰の推定結果をVWLS とメタ回帰によって全体に統合したうえで確かめたことが,この論文の重要な特徴である。また,多段階利益の持続性にかんして,売上総利益率の持続性が一番高く,当期純利益の持続性は一番低かった。営業利益率と経常利益率のあいだには大きな差異はないものの,多段階利益の計算順にしたがって,一時的利益をより多く含む利益ほど,係数は低下するという事実が観察された。ただし,複数の方法で比較したところ,係数に有意な差異があるかについては,頑健な結果は得られなかった。